片柳すすむ

かたやなぎ 進
衆院神奈川10区 国政対策委員長(前川崎市議会議員)
市議会傍聴レポート(議会活動報告)

「航空機による臨海部コンビナート事故の被害想定を行うべき」と代表質問

2020年9月11日

久々のブログ投稿になってしまいました。

羽田新飛行ルートの問題で、川崎市臨海部石油コンビナートで航空機が事故を起こした場合の「被害想定」が行われていないという問題を追及しました。
今回の質問への答弁で、川崎市が羽田新ルートを前提としていない段階(2004年)から「もし航空機がコンビナートに墜落したら」という想定をして消防がどう対応するかの指針を持っていることが明らかになりました。本文に出てきますが、ものすごい被害が想定されています。
また、新ルートによりその危険が数十倍・数百倍以上にふくれあがるのに、県に対して「コンビナート防災アセスメント調査をやり直せ」とは言おうとしない、新ルートを強行した国にも責任を求めようとしない、市長の姿勢が浮き彫りになりました。
新ルートは、川崎市が国との間で交わしていた「工業地域上空の飛行禁止」の通知がある限り実行することができませんでしたが、市長は市民にも議会にも知らせないまま勝手に国との間で通知変更を了承してしまいました。それならば、国に対して安全確保を求める責任があるはずです。

しかし結局、最後まで「国の対応状況をしっかりと確認し…県や東京空港事務所とも連携強化する」としか答えませんでした。

引き続き、市民の皆さんと力を合わせてまずはコンビナートの被害想定を示させ、危険な飛行ルートを中止させるようにしていきたいと思います。

以下、今日の代表質問の内容をお知らせします。

初回の質問

羽田新飛行ルートについてです。

これまでも、コンビナート上での航空機の墜落や落下物などの事故の被害想定が行われておらず、周辺住民や立地企業などに事故のリスクが示されていないことについて、問題提起をしてきました。

消防庁の『石油コンビナートの防災アセスメント指針』では、防災アセスの「調査結果は…利害関係にある事業所と住民に説明し、双方に納得してもらったうえで協力を仰ぎ石油コンビナートおよび周辺地域の安全確保に努める必要がある」と述べて、住民に災害のリスクを公表することを求めています。本市は、洪水、津波、土砂災害に備えてハザードマップを作成して、起こり得る災害について市民に事前に知らせています。起こり得る災害の規模や被害想定地域、リスクなどを市民に公表することの意義について、危機管理監に伺います。

『川崎市臨海部防災対策計画』のリスク判定は、災害の引き金となる事象をまず想定し、それに続く災害の拡大を阻止できたかどうかを分岐させていく「イベントツリー図」を作成し、定量的評価を行っています。この「ツリー図」では、東日本大震災の際に市原市で発生したような大規模な爆発火災についても、初期事象と位置付けられる「配管の大破」から進展した結果起こるものとされています。航空機からの落下物や墜落などが起きた場合、この初期事象にあたる「配管の大破」は起こらないと言えるのか、消防局長に伺います。

『臨海部防災対策計画』は、県のコンビナート防災アセスメント調査による地震の場合のコンビナートの被害想定を元に、コンビナート各施設の地震の被害想定やリスク評価を明確に示しています。それと同時に、消防庁の『コンビナート防災アセス指針』は、「本指針で取り上げていない災害が重要と考えられる場合には、本指針の考え方を参考に、立地環境なども考慮して独自に評価を行うことを推奨する」と述べています。国のアセス指針の改定も、県の行った防災アセスメントも、東日本大震災を契機に行われています。当時は、コンビナート上での航空機事故が想定されていないのも無理はありませんが、現時点で本市は、コンビナート上空を飛行機が年間8千便も飛ぶという立地環境となっているのですから、県に対して、コンビナート上で航空機事故が起きた場合の防災アセスメント調査を行い、被害想定を明らかにするよう要請すべきですが市長に伺います。また、その被害想定を市の臨海部防災対策計画に反映させるべきです。市長に伺います。

答弁 (市長)

 臨海部の被害想定についての質問でございますが、

 本市の「臨海部防災対策計画」の基礎データである「神奈川県石油コンビナート等防災アセスメント調査」は、消防庁が作成した「石油コンビナートの防災アセスメント指針」に準拠しており、航空機の災害による被害は想定されておりません。

 本市では、新飛行経路の運用開始に伴い、いざというときに備え、空港管理者である東京空港事務所と定期的な情報交換と連携強化を図るための連絡会を設置したところでございます。

 引き続き、国の対応をしっかりと確認していくとともに、本市としても臨海部の防災対策を進めてまいります。

答弁 (消防局長)

 配管の破損についての質問でございますが、

 高圧ガス等の配管に外部からの強い衝撃が加われば、破損することも考えられます。

 仮に配管が破損した場合には、ただちに自衛消防隊等により緊急遮断等の活動が行われるほか、消防局としても状況に応じて必要な消防部隊等を投入し、友好的刹那消防活動を展開してまいりたいと存じます。

答弁 (危機管理監)

 災害リスク等の公表についての質問でございますが、

 本市は、細長い土地に150万人を超える方々が住んでいる都市であると共に、多摩川と鶴見川に挟まれ、北部は丘陵、南部は海に面しており、多様な自然環境の中に位置していることから、地震・津波・洪水・土砂災害等、様々な自然災害が発生する可能性がございます。

 ハザードマップの作成・周知につきましては、各種法律に基づき、市民の皆様に対し、発生リスクのある身の周りの自然災害を事前に知り、備えていただくことを目的としておりまして、実際に災害が発生した際に、迅速な避難行動につながることから、大変重要であると認識しているところでございます。

再質問

羽田新飛行ルートについて、市長に伺います。

航空機からの落下物の際にも「配管の破損」は起こり得る、との答弁でした。また国交省は2017年11月以降の2年間で974件、1180個の「部品欠落」があったと回答しています。今後年間数千便がコンビナートへ離陸するのですから重大事故の確率は確実に上がります。

質問に対し市長は航空機に関わるコンビナート災害の調査を求めるとは明言しませんでしたが、航空機の災害を想定していない「臨海部防災対策計画」で、乗客やジェット燃料を積んだ航空機事故やコンビナート災害に対応できると考えているのか、伺います。また、消防庁の「コンビナート防災アセス指針」には「本指針で取り上げていない災害が重要と考えられる場合には、立地環境も考慮して独自に評価を行うことを推奨」しています。いわゆる「できる規定」ではなく「推奨」しているのです。

市長の役割は市民とコンビナート労働者の命と安全、財産を守ることにあり、少なくとも市民に対し被害想定を明らかにする責任が市長にはあります。市が、コンビナート防災アセスメント調査の実施主体である神奈川県に対し、コンビナート防災アセスメント調査の実施を強く求めるべきです。伺います。

再質問への答弁 (市長)

臨海部の被害想定等についての御質問でございますが、

東京国際空港周辺において航空機事故が発生した場合、関係機関は「東京国際空港緊急計画」によるほか、地域防災計画等に基づき対処するものと定められておりますので、本市消防局の「航空機災害警防活動指針」等も踏まえ、関係機関で連携し、対応してまいります。

また、新飛行経路の運用開始に伴う神奈川県の対応といたしましては、「神奈川県石油コンビナート等防災計画」を令和2年3月に修正しておりまして、「神奈川県石油コンビナート等防災アセスメント調査」につきまして、新たな調査は、現状では検討していないと伺っているところでございます。

引き続き、県と連携し、国の対応状況をしっかりと確認していくとともに、いざというときに備え、本市として臨海部の防災対策を進めてまいります。

再々質問

航空機によるコンビナート事故の被害想定について、市長に伺います。 

答弁された市の「航空機災害警防活動指針」は、コンビナートに航空機が墜落すれば、機体が原形をとどめることなく飛散し燃料が広範囲に飛散して、同時に数箇所での火災発生が予想され、場合によっては「放射熱により消防隊等の接近が困難になり…消防力を分散し対応せざるを得ず、さらにタンク内の燃料に引火して、誘爆、ファイヤーボールの発生危険を生ずる」という凄まじい状況となるとしています。

航空機災害警防活動指針(抜粋)-1

「航空機災害警防活動指針」の抜粋

この「指針」は2004年に策定されたもので、あくまで従来の「上空飛行禁止」通知にもとづく「例外」としての航空機事故に対するものですが、それですらこの壮絶な被害状況を想定して対応方針を定めているのです。

いま状況が大きく変わり、世界で唯一コンビナートの真上に年間8千便も飛行する新ルートが運用されているのに、県に「新たなコンビナート防災アセスメント調査は、現状では検討していない」と言われて、そのまま引き下がっていいのでしょうか。

市長は県に対し「市民と労働者の安全が守れない」と調査を求め、それを防災対策計画にも反映し、市民にも公表すべきですが、伺います。

また、国策としてコンビナート上空飛行を強行したのですから、国の責任で事故の際のアセスメント調査を行うのが当然です。川崎市は、50年前に市民と議会が強く求めて国に約束させた「上空飛行禁止」の通知を、市民にも議会にも相談なく撤回してしまったのですから、安全対策に万全を期すように国に求める責任があります。

航空機によるコンビナート事故の防災アセスメント調査と被害想定は、国が責任をもって行うよう強く求めるべきです。市長に伺います。

再々質問への答弁(市長)

被害想定についての御質問でございますが、

東京国際空港周辺において航空機事故が発生した場合、関係機関は「東京国際空港緊急計画」によるほか、地域防災計画等に基づき対処するものと定められておりまして、特に火災等が発生した場合に最も効果的な警防活動を行い、被害の軽減を図ることを目的にケースに応じた警防活動指銑等を定め、訓練を通じて、警防活動に従事する職員や関係機関に周知徹底を図っているところでございます。

引き続き、これまでの要望に基づく国の対応状況をしっかりと確認していくとともに、県や東京空港事務所とも連携強化を図り、本市として臨海部の防災対策を進めてまいります。

最後に

「警防活動指針」はあくまで消防活動のためのもので、災害の規模やその及ぶ範囲、避難行動などを市民に知らせるためのものではありません。
一方、臨海部防災対策計画の地震の想定では、最悪のコンビナート事故の場合、川崎区を超えて「幸区まで屋内避難が必要」と避難行動も含め示されています。

スライド14

(臨海部防災計画の一部分を図示したもの・片柳作成)

臨海部防災対策計画

(臨海部防災対策計画より、最大規模の高圧ガスタンクの爆発の場合の被害想定)

警防活動指針は、航空機がコンビナートに墜落したら「通常のタンク火災とは著しく様相の異なった」災害となる、としているのですから、地震の場合と比べて、コンビナート周辺地区では甚大な被害となり、被害地域は幸区以北にまで広がることが考えられます。

市長からはそうした被害想定のための調査を県に求めることについて、前向きな答弁はありませんでした。市民やコンビナート労働者などに災害のリスクを誠実に示すべき、市長の責任が問われます。アセス実施の権限を持つ県、羽田新ルートの運用を強行した国に対し、航空機によるコンビナート事故のアセスメント調査の実施と被害の想定を行うことを求めることが、市長のやるべきことです。

ひきつづき求めていきたいと思います。

片柳すすむ

ブログ新着記事

  • ブログ過去の記事

リンク

PAGE TOP