低空飛行に反対する「区民の会」など市民の運動で大きな情勢の変化が
3月29日から羽田新飛行ルートの運用が強行されました。
川崎市民・川崎区民とコンビナート労働者にとっては、羽田を出た直後の飛行機が川崎臨海部石油コンビナートの上空へと離陸していく、危険極まりないルートです。もともと1960年代には石油コンビナート上空を飛行する危険性から、市民と議会と行政が一体となった運動で、国と「羽田空港を離着陸する飛行機は原則コンビナート上空を飛ばさない」との取り決めまで交わしました。
1966年(昭和41年)3月10日 市議会から国への意見書
1970年(昭和45年)7月20日 川崎市長から運輸大臣への要望書
同1970年(昭和45年)11月6日 東京航空局(運輸省)通知
■「新ルート撤回を」の請願第6号(2019年10月8日)
今回、この通知は反故にされてしまい新ルートが強行されましたが、その一方で「羽田増便による低空飛行に反対する『川崎区民の会』」の粘り強い運動で、大きな情勢の変化が起こっています。
まず、取り組みを時系列で振り返ってみます。
「区民の会」が立ち上がって、もっとも大事な柱である「新飛行ルートの撤回・中止」を打ち出した請願署名を集めて議会に提出しました。これが運動の起点になりました。
請願第6号 『相次ぐ落下事故を踏まえ、住宅地と石油コンビナート上空を低空飛行させる危険な羽田空港新飛行ルート案の撤回を求める意見書提出を求める請願』(10月8日受理)
↓
請願要旨:住宅地と臨海部石油コンビナート上空を低空飛行させる危険な羽田空港新飛行ルート案を撤回するように、国に対して意見書を提出してください。
▽請願第6号の審査
自民 |
共産 |
公明 |
みらい |
チーム無 |
無所属 |
|
請願 |
継続 |
採択 |
継続 |
継続 |
趣旨採択 |
継続 |
意見書 |
× |
〇 |
× |
× |
× |
× |
採決結果→「継続審査」
この審議も重要ですが、今回は流れの関係上省略します。
■実機飛行確認(2020年1月30日~2月12日)
年が明けて「実機飛行確認(試験飛行)」が始まりました。これまでは半信半疑だった方も、騒音や振動を体験されて「これは大変なことだ」と改めて認識が広がりました。
■「騒音対策・被害想定、市民への説明を求める」陳情第47号(2月20日)
実機飛行の体験をふまえて、新飛行ルートが始まる前に市民の思いを議会に届けて審議してもらおう、と提出されたのが陳情第47号でした。
結果的には、この陳情の内容そのものの方向に情勢が動いていきました。
陳情47号 『羽田新飛行ルートについての市民への説明と騒音対策・被害想定などを求める陳情』受理
http://www.city.kawasaki.jp/980/page/0000115069.html
↓
要約すると
3月29日から開始される羽田新飛行ルートに関わり、騒音測定器の設置をするなどの騒音対策を行うこと、教室型説明会を開催すること及びコンビナート地域で事故や災害が発生した際の被害想定と避難や対処に関わる計画を策定することを求めます。(陳情要旨より)
項目にすると
①騒音測定器の設置をする(従来測定局のあった殿町小学校にも追加設置、防音工事の対象の拡充)などの騒音対策を行うこと
②教室型説明会を開催すること
③コンビナート地域で事故や災害が発生した際の被害想定と避難や対処に関わる計画を策定すること
という内容です。
■陳情は審査の結果「継続審査」になる(3月13日まちづくり委員会)も、その後大きく動く
▽陳情第47号の審査
自民 |
共産 |
公明 |
みらい |
無所属 |
継続 |
採択 |
継続 |
継続 |
継続 |
議論の中では共産党の石川建二議員は航空機事故の被害想定がされていない問題を指摘し市は「国や県も被害想定をしていない」と認め「それでも必要な対策を行うため事故の際のオペレーションの確認などが必要だ」と述べ、教室型説明会の開催を求めました。石川議員以外にも、公明、みらいの議員らが説明会の開催や騒音測定局の殿町小学校への配置を求めました。
採決にあたっての態度表明は以下の通り(要約)
・(自民)市が国とのパイプ役になるべきだと思うが、住民の声が聞こえていないので継続
・(共産)コンビナートの危険性、騒音、説明会のいずれも行政も国と県に要望するとのことなのでそれを議会もバックアップすべき。採択。
・(公明)まだ途中、国からの説明も受けてから。騒音は個人の受け取り方も違う。継続。
・(みらい)国が精査中でその過程でもあるので、継続。
・(無所属)市が国に要望するとのことなので、継続。
採択結果は「継続審査」になりました。
*請願第6号も「継続」に。
■市長が「陳情」の項目をそのまま国土交通省に要望(3月26日)
驚いたのは陳情審査の後の動きです。
3月13日のまちづくり委員会で「継続審査」とされた陳情第47号の内容がほぼそのまま、国に対する市の「要望書」に反映されていました。
羽田空港新飛行経路の運用に関する対応について(赤羽国土交通大臣への福田川崎市長、松原大田区長の連名要望書)
http://www.city.kawasaki.jp/500/page/0000116287.html
①騒音・振動影響の軽減対策(騒音の少ない機への変更、B滑走路からの離陸運用の見直し)
②防音工事助成制度の拡充(研究施設の防音工事への拡充、住宅学校病院等へのさらなる拡充)
③騒音測定局の増設(殿町小学校)
④コンビナート上空飛行における安全対策(災害予防の情報交換、事故時の具体的な対処方策確認など)
⑤市民への丁寧な説明
市民と運動とともにしてきた日本共産党をはじめ、丁寧に声を拾い届けてきた市民の皆さんの運動が、各会派の議員を動かし、「継続」とはなったものの「市民への説明は必要だ」「騒音測定局は殿町小に増設しないと」「防音工事の拡充も必要だ」という議論が行われたことで、国への要望書に反映させるところまで到達したのだと思います。
それにしても、ここもで「丸のみ」させたのは本当にすごいことです。
■新飛行ルート運用開始(3月29日)
コロナ感染拡大の中で新ルートの運用が始まりましたが、「コロナで減便されているもとで本当に新ルートが必要なのか」「やはり大変な騒音だ、やめてほしい」との声が広がりました。
■国交省の「ルート再検討会」が開始(6月30日)
羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会(第1回)
「羽田新経路の固定化回避に向けて考えられる技術的選択肢について多角的な検討を行い、今年度中にそれぞれの方策のメリット・デメリットを整理予定」として、同検討会が開催されました。
これまでかたくなに「予定通り新ルートを運行する」としてきた国交省の姿勢が変わりました。
ここには川崎市民・川崎区民のみなさんの運動の力が大きく影響していると心底感じています。
さあ、もうひと踏ん張りして、新ルート中止に追い込みましょう。