片柳すすむ

かたやなぎ 進
衆院神奈川10区 国政対策委員長(前川崎市議会議員)
市議会傍聴レポート(議会活動報告)

決算特別委ーこどもの貧困対策「既存制度の底上げ」「アウトリーチ支援の強化」は具体化されたのか

2020年9月24日

9月18日の決算審査特別委員会・文教分科会(こども未来局の部分)について、質問と答弁を報告します。

質問① サポートブックの決算額について

こどもの貧困対策について伺っていきます。まず4款1項4目青少年事業費についてです。こどもの養育や発達、不登校や生活支援などのかかわる公的機関や相談窓口等を冊子にまとめた「かわさきサポートブック」を、こども未来局が作成しているとのことです。この冊子はどのように活用しているのか、作成と活用にかかわる決算額も含めて伺います。

答弁① こども未来局 企画課長

かわさきサポートブックについての御質問でございますが、

かわさきサポートブックは、各区役所や児童家庭支援センター、児童相談所などの相談機関のほか、市内小中学校、高校、大学等にも配布しており、それぞれの配布先において、さまざまな課題を抱えている子ども、若者、その御家族の方などを適切な相談窓口に繋ぐため活用されているところでございます。

また、決算額につきましては、 30万8千円でございます。

質問② 「子どもの貧困対策を推進する視点」について

サポートブックは教育委員会所管の機関も含めて、市の子ども・若者の相談窓口を全体的に相談できるものでここから相談につながることが非常に重要です。

川崎市は、こどもの貧困率が上昇しているなかで本市の子ども・若者とその家庭の生活実態や抱えている課題等を把握するためとして、2017年1月から「こども・若者生活調査」を行いました。その後8月に、調査の分析結果のまとめとして、市は所得水準が低いことが学びや進学に影響を及ぼすこと、また保護者の成育歴や疾病・障害など世帯の背景や生活状況など、様々な問題がかかわって子どもの貧困が生じていること、貧困が本人の意思や努力とかかわりなく起きていることを明らかにしました。

そこで伺いますが、この分析結果を受けて2017年11月に市が発表した「子どもの貧困対策の基本的な考え方」では、どのように「子どもの貧困対策を推進する上での必要な視点」を定めたのか、伺います。

答弁② こども未来局 企画課長

子どもの貧困対策を推進する視点についての御質問でございますが、「川崎市子ども・若者生活調査分析結果報告書」では、今後の子どもの貧困対策を効果的に推進していくため、学識者から子どもの貧困の問題をとらえる上で必要な視点等における課題や必要な支援について、御意見をいただくともに、それらの意見をもとに対応策の考え方について検討を行ったところでございます。

「子どもの貧困対策の基本的な考え方」に示されている、子どもの貧困対策を推進する上で必要な視点については、報告書で分析した内容について、それぞれ課題や必要な支援ごとに整理し、まとめたものでございまして、関係各課と調整し、川崎市こども施策庁内推進本部会議で決定したものでございます。

質問③ 既存の制度の底上げとアウトリーチの考え方による支援の具体化の状況について

答弁された『基本的な考え方』は、成育歴や疾病・障害などにより、支援が必要な状況であっても援助を求めるSOSが出せない世帯に対して、制度を届ける『アウトリーチの視点』とともに、経済力、学力、非認知能力などの「社会的相続」を補完する視点を持って『既存の制度・施策の底上げ』を図ることなどが重要だとしています。

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(「川崎市子ども・若者の未来応援プラン」より抜粋)

この「基本的な考え方」からが出されてから3年が経ちますが、既存制度・施策の底上げとアウトリーチの考え方による支援は、どのように具体化されたのか、伺います。

答弁③ こども未来局 企画課長

既存制度・施策の底上げとアウトリーチの考え方による支援についての御質問でございますが、子どもの貧困対策については、「子どもの貧困対策の基本的な考え方」に基づき、「川崎市子ども・若者の未来応援プラン」を策定し、具体的な施策や取組を展開しているところでございます。

本プランにおいて、子どもの貧困とは、経済的な問題に様々な要因が関連していること、それが個人の意思や努力等によらないところで生じていることに問題があると捉えており、対応策を検討するにあたっては、子ども・若者の成長段階に応じた切れ目のない支援や、既存制度・施策の底上げとアウトリーチによる支援が必要であるとしています。

既存制度・施策の底上げにつきましては、ひとり親家庭支援施策を再構築する中で、高校生等の通学交通費助成事業の実施や、ひとり親家庭等医療費助成の所得制限を緩和したほか、小児医療費助成における入院医療費助成の所得制限の廃止などを行ってきたところです。

アウトリーチの考え方による支援につきましては、プランに位置付けた、子ども・若者支援に関わる相談・支援機関の充実とネットワークの強化に向け、これまでも、関係部署等との相互連携に向けた横断的な調整等を図ってきたところでございます。

質問④ 教育委員会との検討や協議の状況について

こども未来局の所管する部分で、小児医療費助成制度の入院医療費について所得制限を廃止するなどの取り組みをされたことは大事な一歩ですが、既存制度の「底上げ」というにはまだまだ十分だとは言えません。

国の子どもの貧困対策の「大綱」では、学校をプラットフォームとして子どもの貧困対策を推進するとしています。市の『基本的な考え方』でも「学校教育を中心に様々な福祉施策により補完を行う」などとしています。特にこれまで述べてきた貧困家庭を支える既存制度の「底上げ」について言えば、経済的な支援を直接行う制度としては、ひとり親家庭に対する施策の他は、就学援助制度や奨学金制度に限られています。

こどもの貧困対策を直接所管するこども未来局として、これらの制度を所管する教育委員会と、これまで述べたこどもの貧困対策の基本的な考え方で示された「既存制度・施策の底上げとアウトリーチの考え方による支援」の重要性をどのように共有してきたのか、その具体化に向けた検討や協議を教育委員会と行ってきたのか、うかがいます。

答弁④ こども未来局 企画課長

教育委員会との検討等についての御質問でございますが、

子どもの貧困対策については、「川崎市子ども・若者の未来応援プラン」に位置付けられており、その推進にあたっては、川崎市こども施策庁内推進本部会議において、関係局間の横断的な調整と情報の共有化により、こども未来局を中心として全庁的な対応を図っているところでございます。

また、本プランの進行管理にあたっては、毎年、計画に位置付けた事業等の進捗状況に関する継続的な点検を行い、施策や指標の達成状況についても評価を実施しております。

子どもの貧困対策の推進についても、プランの点検・評価を行う中で、プランに位置付けた推進項目について、その進捗状況の把握を行うとともに、次年度に向けた取組の方向陛について、関係局と調整を図ってきたところでございます。

教育委員会との連携につきましては、各区地域みまもり支援センターが毎年、小中学校を訪問して顔の見える関係づくりを進めてきたほか、要保護児童対策地域協議会において、情報共有などによる連携強化を図っているところでございます。

また、総合教育センターや教育相談室におきましても、児童・生徒からの相談を必要な支援につなげるため、各区地域みまもり支援センターや児童相談所と連絡協議会が開催されております。

質問⑤ アウトリーチ機能の強化について

「既存の制度・施策を底上げする」という明確な方向が打ち出されているもとで、こども未来局と教育委員会が連携して、直接経済的な手立てを取れる制度を底上げして、子どもの貧困を予防するとともに、貧困に手当てしていくことが重要です。「子ども若者の未来応援プラン」にも位置付けられているとのことですので、具体的に進めていただくようお願いします。

「子どもの貧困に対する基本的な考え方」の中では、援助希求が発信できない、つまりSOSが出せないこども・若者、家庭を支援につなげるための「施策推進の方向性」として、『相談機関等による支援の充実と連携の強化』が打ち出されています。具体的な内容としては「公的な相談機関・支援機関の専門性の強化、支援の充実と、機関相互の連携の強化」を行う、とされています。

それではこのアウトリーチ機能を実際に現場で担う専門職はどの程度強化されたのでしょうか。「地域みまもり支援センター」の保健師、助産師、社会福祉職、心理職、栄養士、歯科衛生士、保育士、教育関連職員の、『基本的な考え方』が出された2017年度以降の推移について伺います。

答弁⑤ こども未来局 企画課長

地域みまもり支援センターについての御質問でございますが、

センターにおける保健師、助産師、社会福祉職、心理職、栄養士、歯科衛生士、保育士及び教育関連職員の人数につきましては、合計で、平成29年度は543人、平成30年度は551人、令和元年度は558人、令和2年度は558人となっており、平成29年度と比較いたしますと15人多くなっているところでございます。

引き続き、支援が届いていない家庭が、地域で孤立することなく安定した生活を送っていけるよう、困難な課題を抱える家庭を把握し、適切な支援につなげてまいります。

意見 「既存制度の底上げ」「アウトリーチ支援強化」の具体化を

答弁の中で、子どもの貧困対策の考え方の「既存制度の底上げとアウトリーチの考え方による支援」という方向は、子どもの未来応援プランに反映されていると、述べられました。

アウトリーチによる支援を実際に現場で行う専門職の配置が特に重要です。29年度以降、増えたといっても15人です。「支援を必要とする人に届ける」ことが全面的に実践されているとは言いきれません。専門職を増やす方向を明確に打ち出して進めていただくよう要望します。

またこの間子どもの貧困の担当部署は、青少年支援室から企画課に移ったとのことです。教育委員会も含めて『こどもの貧困対策の基本的な考え方』で示された「既存制度・施策の底上げとアウトリーチの考え方による支援」という方向を貫いて実践をすすめるという点では一歩前進したと思いますが、さらに庁内横断的に、日常的にこどもの貧困対策を推進していただくよう要望します。

以上で質問を終わります。

片柳すすむ

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