片柳すすむ

かたやなぎ 進
衆院神奈川10区 国政対策委員長(前川崎市議会議員)
市議会傍聴レポート(議会活動報告) 活動レポート

高校内居場所カフェ―「困難な状況を公的支援につなぐ最後の砦」の役割を (一般質問)

2019年6月29日

6月28日の一般質問で取り上げた「高校内居場所カフェ」の質問と答弁を紹介します。

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「生徒の抱える生活や将来に対する課題に対応する」と明確な目的にすべき

高校内居場所カフェの発展と充実について、教育次長に伺います。

この取り組みは「500人の全校生徒のうち1割・50人が退学する」という大阪府の高校からはじまりました。「不登校・非行・障がい」などの問題に教員が振り回されて、他の生徒への対応は後回しとなり、続々と中退者が増えていく、という悪循環を断ち切るために、「不登校・非行など以外の生徒」を含めてフォローしよう、と居場所カフェが開始されました。

そうした中で「居場所カフェ」では、飲み物やお菓子、朝食を提供し、高校生が誰でも立ち寄れてほっとできる「居場所」となることを第一の目的としています。そして孤立してしまいがちな高校生どうしがつながり、教員以外の大人やボランティアの大学生、専門職の方々とも自然に、何気なく交流する機会をつくるということがめざされています。

「カフェ」は、いわゆる「困難校」に設置されることが多いのですが、本市の子ども若者実態調査でも明らかになったように、経済的な貧困など家庭の様々な困難を経験している生徒などは、文化的な経験・体験を奪われる傾向があります。そのため多くの「カフェ」で料理をみんなでつくる食育、浴衣を着たり映画を見たりするなどの文化に触れるイベントなども行いながら、中途退学を予防し高校への定着をはかること、基礎学力を向上させること、就職・進学など進路に向かう意欲と力をつけることなどに向けた取り組みが行われています。

川崎市立川崎高校定時制の「ぽちっとカフェ」は、県内で最も早く2014年に創設されました。毎週金曜日17時オープンで、1回平均72.3人もの生徒が訪れ、卒業生などから「困ったらぽちっとカフェに相談に行くといいよ」「ぽちっとカフェがあるから市立川崎高校に進学するといいよ」とまで言われているとのことです。地域に精通する社会福祉法人が運営しているため、様々な支援が必要な生徒に対しても、地域や関係行政機関との連携を専門的かつ密に行い、対応することができています。

昨年4月から始まった市立高津高校定時制の「さくらカフェ」は、「1度は利用したことがある」という定時制生徒が62%にのぼり、定着してきています。運営する株式会社は、キャリア支援に重点を置いて先生とも協力して就職支援につないでいます。

県内13校の「居場所カフェ」で共通して指摘されていることは、「困難な状況を抱える子どもたちを、公的支援につなぐ最後の砦である『居場所カフェ』の役割を強化しなければならない」ということです。高校在学中は「児童」として社会福祉の諸制度の対象となりますが、18歳を過ぎて高校を卒業してしまえば、その対象外に置かれてしまう面があります。だからこそ高校在学中に家庭をはじめ生活上の課題を発見し必要な支援につなげることが必要です。

あらためて「居場所カフェ」の仕様書を確認したところ、川崎高校の仕様書には「生徒が抱えている生活や将来に対する課題に対応し、就学の継続と卒業後の自立に向けた支援を行う」との項目がありましたが、高津高校の仕様書にはその項目がありませんでした。

定時制高校の生徒が抱える様々な困難を取り除いてこそ、就労や進学をはじめ次のステップにつなげることができるのではないでしょうか。また、各地のカフェではスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーはじめ専門職と生徒との自然な交流を入口にした対応が図られているところもあります。

こうしたことをふまえ、次期以降の仕様書には「生徒の抱える生活や将来に対する課題に対応すること」を明記するべきです。またカフェと高校が協力して様々な専門職・専門機関などと連携し、生徒の様々な生活上の課題に対応できるようにするべきです。伺います。

教育次長の答弁

定時制生徒自立支援事業についての御質問でございますが、本事業は、「相談・個別サポート」、「キャリアサポート」、「学習サポート」の3つの自立支援を主な目的としているところでございますが、現在、市立川崎高等学校では、教員や保護者とは違った視点・立場から生徒にアプローチする「相談・個別サポート」を中心に、また、市立高津高等学校では、就職や専門学校進学に向けた面接練習や、さまざまな相談に対応する「キャリアサポート」を中心に、モデル事業として取り組んでいるどころでございます。

次年度以降につきましても、当該モデル事業を検証しながら、定時制生徒の二-ズに応じたより効果的な事業となるよう、引き続き取組を進めてまいります。

「居場所カフェ」の全定時制への展開と、事業予算拡大を

高校生のコミュニケーションを育み、中途退学予防や学校への定着をはかるとともに、高校を卒業して社会に投げ出される前の段階で生活や進路の様々な課題を解消する支援につなげていくという重要な「居場所カフェ」の取り組みを、市内全定時制高校に広げ、今後も継続して取り組むべきと思いますが、今後の計画を伺います。

どちらのカフェも大変参加者が増えています。また「ぽちっとカフェ」では、孤立している生徒を見つけて寄り添うために学校内を巡回して声をかけてまわる取り組みをしています。こうした取り組みをささえるスタッフも今後増やすことが必要です。ボランティアなどではなく、継続したスタッフを確保するためにも事業予算を増額すべきです。伺います。

教育次長の答弁

今後の取組についての御質問でございますが、現在実施している両校でのモデル事業を検証し、それぞれの定時制高等学校の特色や生徒の実態を踏まえながら、他校への展開も含め、生徒のより効果的な自立支援について、引き続き検討してまいります。

意見 現行「週1回」からの拡充、「最後の砦」の役割を

他校への展開も含めて検討する、との答弁ですので、ぜひ早く全校で「居場所カフェ」が設置されるよう要望します。また様々な困難や悩みを生徒がカフェスタッフに話すことができるようにするためにも、現行の「週1回」のペースでいいのかも問われます。この点も含めて予算の拡充を要望します。また、どんな事業者が受託したとしても「困難な状況を抱える子どもたちを、公的支援につなぐ最後の砦」の役割を果たせるようにするのが、教育委員会事務局の役割ですので、仕様書に位置付けるよう要望いたします。

片柳すすむ

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